「GFSC希望の和太鼓プロジェクト」支援報告 ~ 太鼓を叩き希望を輝かせよう ~

NPO法人日韓文化交流会
東日本復興支援チームリーダー  宇佐崎

我々、NPO法人日韓文化交流会(以下、日韓)は、予てよりGFSC(Good Friends Save the children)として長い間、日韓協力によるアジア貧困地域子供教育支援をおこなってきた。
3.11東日本大震災の発生により今、支援すべきは日本の被災地の子供達だと考えた。
被災地では、災害により子供達を取り巻くコミュニティーは崩壊し、被災のトラウマに苦しむ状況だった。
我々は文化・芸術により子供達の精神的外傷を解消できるすべは何か、地元の復興への道は何かと模索した。

宮城県石巻市は、この地を故郷とする<布施辰治>氏という人権弁護士が、韓国より日本で初めて「大韓民国建国勲章」を受けた歴史もあり日韓両国の縁の深い地であった。

宮城県石巻市立雄勝中学校では、地元に伝承される「伊達の黒船太鼓」の学習があったが、太鼓も全て流失し、指導者も被災のための転居により喪失状況であった。
日韓は学校、地元文化芸術団体と共に中・長期的に雄勝中学校和太鼓支援を継続すべく調印を交わし、第1号の和太鼓を雄勝中学校に於いて贈呈し、和太鼓ワークショップを開始した。
日韓には子供達の喜び、怒り、哀しみ、楽しみを太鼓にぶつけ未来への希望に向かって欲しいとの強い願いがあった。
雄勝中学校は、古タイヤに梱包用テープを貼った輪太鼓を作成し生徒全員が練習に励んだ。


  • 生徒全員が学校・住居を失った

  • 喜び、怒り、哀しみ、楽しみを輪太鼓に打ち込む

被災の中、幸いにも生徒全員の無事の確認がとれた2011年3月19日からちょうど半年後の9月19日、当法人が主催したK-POPフェスティバル“KMF2011”に雄勝中学校生徒を招待し、オープニングを飾り、日頃の練習の成果披露の場を提供した。
『これが全ての始まりでした』と教員の一人が後に灌漑深げに語られるように、石巻市からの初めての遠征だった。
彼らの演奏する“黒船太鼓”の力強い音の響きは、韓国のトップアーティストの音楽に勝るとも劣らぬ感動を観客に届け、会場が割れんばかりの拍手が贈られた。


  • 2011.9.19“KMF2011”のオープニングを飾る

  • 感想を伝えるにも感極まり涙がこぼれる

上京を機に、雄勝中学校に都の教員派遣事業で赴任した教員の縁から翌9月20日、東京都中央区立佃中学校と太鼓交流の場を持った。
6月からの練習の開始で、練習期間は短かったが、雄勝中学校の魂を込めた息の会う演奏に佃中学校生徒達は真剣な眼差しで聞き入っていた。閉会の際に雄勝中の代表は「私達は津波で校舎や家、豊かな自然を失いましたが、下ばかり向いてではなく前に向いて行こうと決心しています。また皆さんからいただいた支援に恩返しする気持ちで、太鼓を演奏し続けます」と話し、声援を込めた大きな拍手を受けた。


  • 佃中学校で黒船太鼓を演奏する雄勝中生徒達

  • 佃中学校太鼓部の演奏

2012年3月10日、震災後初の卒業式が行われた。
学校には、この震災を教員生徒全員が共に乗り越えた想い出として永久に伝承できる太鼓演奏曲があったら・・との思いがあると聞き、我々は、校長の“たくましく生きよ”の教訓をもとにオリジナル曲“ねがい~たくましく生きよ~”を和太鼓支援の一環として贈呈した。
その曲は卒業式後の“卒業を祝う会”で在校生から卒業生へ初披露で贈られた。
新生・雄勝中学校の中で苦難に負けず前に進んだ生徒・教師の証として奏で続けられるであろう。


  • 卒業生の“黒船太鼓”演奏

  • 在校生の“ねがい~たくましく生きよ~”演奏初披露

“KMF2011”で「韓国に行ってみたい!」と語った生徒のコメントを聞き、子供達に韓国の文化や美しい自然に触れ楽しい想い出を作ってもらうべく、2012年8月19日から8月23日まで、雄勝中学校教員・生徒全員及びワークショップ支援協力地元文化芸術団体を対象に“希望・夢 韓国の旅プレゼント”を実施した。

< 『希望・夢 韓国の旅プレゼント』 
  開催期間2012年8月19日(日)~23日(木)
主催:GFSC 希望・夢 韓国の旅プレゼント 組織委員会
主管:NPO法人日韓文化交流会
後援:駐日本大韓民国大使館・在韓日本国大使館公報文化院・ソウル市・韓国観光公社・日韓議員連盟・文化芸術による復興推進コンソーシアム・(財)秀林文化財団 >

当時、日韓関係は竹島問題等であまり良い関係ではなかった。
しかしながら、子供達は韓国・三政中学校との太鼓を通しての青少年交流、世界的に有名な仁寺洞広場での公演にて演奏、老人専門療養センター慰労訪問演奏、伝統文化・食文化体験・観光を経験した。
青少年交流をもった韓国・三政(サムジョン)中学校ドラムチームは“いじめ”を太鼓で克服したという経歴をもつチームでもあった。
三政中学校訪問の翌日、両校の生徒は仁寺洞広場の“日韓交流公演”で再び会った。
その姿は旧友の再会のようであった。互いの演奏にリズムを刻む生徒たち。
その日は朝から雨が降り続いていたが、天も見守るかのように演奏の時間は雨も止んだ。
また、韓国人気ドラマの監督・出演者が声援に駆けつけてくれるサプライズに、生徒達は顔を輝かせた。


  • 8.20 韓国・三政中学校で互いに教え合う

  • 8.21 ソウル森での蝶飛ばし蝶のように
    未来へ飛びたとう!

  • 8.21 朝鮮時代の王宮、昌徳宮観覧

  • 8.21 仁寺洞広場・“日韓交流公演”で演奏

  • 8.22 老人専門療養センター慰労演奏

  • 8.22 ロッテワールドでおもいっきり遊ぶ

この旅は、日韓両国のメディアにも多く取り上げられ、厳しい時勢下でも文化交流の大切さに注目が集まった。このような草の根の文化交流こそが日韓両国の未来に大切と語られた。
帰国時には、雄勝中学校の生徒達は本当に子供らしい笑顔と笑い声に溢れていた。

2013年3月9日の卒業式は、震災後輪太鼓練習を牽引してきた生徒達の卒業だった。
前日、謝恩会では韓国への楽しかった旅の数々の写真や想い出が語られた。
卒業式での答辞・送辞にも“希望・夢 韓国の旅プレゼント”が語られた。


  • 2013.3.9卒業式

未曾有の災害を経験した子供達が以前のような笑顔になり、太鼓演奏を通し自らが国際交流もできるという自信をもち未来に羽ばたく気持を得られたなら何より嬉しい。
今年度は震災の年に入学した子供達が最高学年となる。
当法人とGFSCは文化芸術による復興推進の次元として「GFSC希望の和太鼓プロジェクト」第4次雄勝中学校和太鼓支援を今年度も継続してゆく。

関連映像:
KMF2011 Drum Hope! ~奇跡のコラボ~ youtube
宮城・石巻市の中学生が韓国で太鼓披露 震災支援に感謝の気持ち(12 08 22) youtube
GFSC 希望・夢 韓国の旅プレゼント youtube
GFSC 希望・夢 韓国の旅プレゼント SSTV youtube
KMF 2011 YTN News youtube
参考:関連記事集

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